ANA、LCCを一本化 エアアジアとの合弁解消へ
「ピーチ流」移植、テコ入れへ
- 2013/6/10 23:09
- 日本経済新聞 電子版
アジア最大の格安航空会社(LCC)エアアジア(マレーシア)がANAホールディングスとのLCC合弁事業を解消する方針を固めた。鳴り物入りで国内市場に参入したエアアジアだが、利用率の低迷が響いた。ANAは合弁会社を100%子会社化して、同社系のピーチ・アビエーションとのブランド一本化を検討する。

福岡空港に駐機するLCCの旅客機と全日空機(2012年10月)
「長い歴史を持つ航空会社と若い航空会社が理解し合うのは難しい」。エアアジアのトニー・フェルナンデス最高経営責任者(CEO)は10日、クアラルンプールのホテルで日本経済新聞記者の質問に答え、こう語った。提携解消については「まだ決まっていない」としつつも、ANAとの溝の深さをうかがわせた。一方、ANAホールディングスは「(合弁解消が)正式に決まった事実はないがなるべく早く結論を出す」(幹部)とした。
エアアジアとANAが合弁解消に踏み切る理由はエアアジア・ジャパンの低迷だ。昨年3月に関西国際空港を拠点にするANA系のピーチ、同7月に日本航空が出資するジェットスター・ジャパン、同8月にはエアアジア・ジャパンと、LCCが相次いで就航した。だが3社の中でエアアジア・ジャパンは平均利用率で唯一60%台と低迷。4月には50%台と回復の兆しが見えなかった。
低迷の理由としてネット予約システムの使い勝手の悪さがあげられる。他社に比べ時間がかかるうえ、英語の表現が多いなどでリピーターが広がらなかった。国内の航空券販売では旅行会社経由が一定割合あるにもかかわらず、ネット予約だけに固執したことも痛かった。ネット予約も販売手法も、エアアジアが東南アジアで成功した格安モデルだが、日本では本領を発揮できなかった。
エアアジア・ジャパン | ジェットスター・ジャパン | ピーチ・アビエーション | |
就航日 | 12年 8月1日 | 12年 7月3日 | 12年 3月1日 |
路線構成 | 国内線5路線、国際線3路線 | 国内線13路線 | 国内線6路線、国際線3路線 |
主な路線 | 成田―沖縄、中部―福岡など | 成田―沖縄、成田―大分など | 関空―福岡、関空―台湾など |
平 均 利用率 | 64% | 72% | 78% |
運 航 機材数 | 5機 | 12機 | 8機 |
※利用率は昨年8月~今年4月の平均値、ピーチは昨年3月~今年3月
一方、同じANAグループのピーチは事業開始にあたり、利用者の動向を綿密に調査した。バーコードで手軽にチェックインできるなどの独自システムを導入し、高齢者など利用者取り込みに成功している。
今後ANAは、エアアジア・ジャパンを100%子会社化してピーチブランドへの一本化を検討する。ピーチとは独立した会社として運営し、首都圏のLCC事業をテコ入れする。
ただエアアジアの拠点である成田空港が抱える問題は残る。都心から遠い成田空港は早朝深夜のアクセスが悪く、国内線の拠点として認知度もまだ低い。しかも、離着陸の制限時間があるため機材の稼働にも限界があり、運営上の障害が多い。「施設の使用料など空港コストの引き下げもお願いしなければならない」(ANA幹部)だけに、経営改善には時間がかかりそうだ。
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