【ベルリン=松井健】ドイツ連邦参議院(上院)は3日、移民排斥などを主張する極右政党「ドイツ国家民主党(NPD)」の活動禁止を連邦憲法裁判所に申請した。ドイツは憲法(基本法)で違憲政党の禁止を定めており、憲法裁が違憲と判断すればNPDは解散される。
 独メディアによると、上院は申請の理由を「NPDは外国人や移民をドイツから暴力的に追放しようとする目的を持つ」などとして、「イデオロギーはナチスと同一」としている。
 民主的とされた戦前のワイマール憲法がナチスの独裁を許した経験から、ドイツ基本法は「戦う民主制」と呼ばれる仕組みを備える。「自由で民主的な基本秩序を侵害」する政党を違憲として禁止する条項はその一つだ。禁止が実現すれば、1950年代の社会主義帝国党とドイツ共産党以来3例目になる。
 NPDは64年に設立。外国人敵視や移民排斥を訴え、東西ドイツ統一後に旧東独地域で勢力を伸ばし、現在も一部の州議会で議席を持つ。ただ、最近は低調傾向にある。
 NPDの禁止は2001年にも申請されたが、情報機関の連邦憲法擁護庁の協力者がNPD上層部で活動していたことが問題視され、03年に違憲性を 判断することなく手続きが中止された。このため、再び失敗することがあれば、かえって極右を勢いづかせる危険性があるとして、慎重な意見もある。