2013/05/15

記事:「大転換期を迎えたメディア」 上野千鶴子さん

http://digital.asahi.com/articles/TKY201305130514.html?ref=comkiji_txt_end_kjid_TKY201305130514



「大転換期を迎えたメディア」 上野千鶴子さん

写真・図版
上野千鶴子さん=安冨良弘撮影
 「朝日新聞デジタル」は18日で、創刊2周年を迎えます。創刊以来、豊富な動画や写真、多彩な特集を発信し続けてきました。紙の新聞を開いたように読める「紙面ビューアー」など機能を充実したことが支持され、有料会員は12万人を超えました。電子新聞という新たなメディアに完成形はありません。今回は各方面で活躍する方たちに、朝日新聞デジタルへのご意見、デジタルメディアの持つ可能性や将来などを聞きました。
上野千鶴子さん
 今は新聞はデジタルでしか読みません。iPad(多機能タブレット端末)です。移動が多く留守宅に新聞がたまるのも困るし、新聞紙の始末も面倒だし。
 紙面ビューアー機能がようやく登場。遅すぎたと思います。それで驚いたのは広告情報の価値が大きかったんだということ。例えば芸能情報は記事下の週刊誌広告から得ていたことに気づいたのは発見でしたね。
 ネットではなく書店に足を運んで本を買うおもしろさは何か。目的とは違う想定外の発見に出会えることです。新聞もそれと同じ。「情報の落ち穂拾い」ですね。関心のある情報はSNSやメーリングリストからもっとダイレクトに手に入るんですから。
 けれども「落ち穂拾い」を売りにするのは情けない。紙面レイアウトで読みたいというのは、紙媒体に慣れた旧世代の身体習慣。しょせん過渡期です。幕の内弁当型の総合紙の時代は終わりました。ネットでヘッドラインニュースを読む若い世代には検索機能の方が重要でしょう。
 女性運動もウェブに軸足を移そうとWAN(http://wan.or.jp/)の活動を始めました。動画も多様なコンテンツも低コストで発信できる。主宰する上野ゼミもサイト上に引っ越しました。ミニコミの終刊・休刊が相次ぎ、何もしなければ高齢化でじり貧が目に見えている。私たちも必死です。
 活版印刷の祖、グーテンベルクの時代から500年。メディア・テクノロジーは大転換期を迎えています。ネットは情報の民主化のツール、受信も発信も容易です。ジャーナリズムの価値は、今後も調査報道にあるでしょうが、流通の形態が変わります。やがてデジタルメディアが紙媒体に取って代わるでしょう。滅びるのがイヤならサバイバルするしかないのです。(聞き手・渡部薫
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 うえの・ちづこ 社会学者、立命館大大学院特別招聘教授、認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長。近著に「身の下相談にお答えします」(朝日新聞出版)。64歳

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