2013/11/22

記事:LCCは「格安」から再定義を 成長期のASEAN、成熟した北米

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LCCは「格安」から再定義を 成長期のASEAN、成熟した北米
Posted By Tadayuki YOSHIKAWA On 2013年11月10日 @ 13:08 JST In エアライン,解説・コラム
 ASEAN(東南アジア諸国連合)では、LCC(低コスト航空会社)が域内の航空需要の大半を担い、国際線は既存のFSC(フルサービス航空会社)と二極化が進む──。日本アセアンセンターが11月7日に開いたセミナーで、東京工業大学大学院の花岡伸也准教授がASEANにおけるLCC市場の今後について講演した。また、北米でのLCC市場の成熟などから、LCCを「再定義する時期が来ている」との考えを示した。

経済成長で需要顕在化
各地域で状況が大きく異なるLCC=13年10月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
ASEANは2015年に市場統合し「ASEAN共同体」の実現を目指していることや、各国の経済成長により、航空旅客の潜在需要が顕在化すると指摘。現在もLCCの提供座席数トップ4までが東南アジアに集中し、シンガポール-ジャカルタ間がもっとも多いという。東南アジアのLCCの提供座席数は、10月時点でインドネシアのライオン・エア(LNI)が最多で、2位がマレーシアのエアアジア(AXM)、3位がフィリピンのセブパシフィック航空(CEB)と続いていると述べた。
 AXMなどLCC各社は、域内各国で合弁事業を展開しており、合弁会社の設立で、オープンスカイにおける相手国と第三国間の輸送(第7の自由)と、相手国内の2つの地点を結ぶ「カボタージュ」(第9の自由)を実施していると説明した。
 花岡准教授は、成長著しいインドネシアの特徴として「国がFSCとLCCを分けているのはインドネシアだけだろう」と指摘。最高価格設定を国が法律で定めている点など、独特の実情を説明した。また、フラッグキャリアであるガルーダ・インドネシア航空(GIA)は、国内線と国際線でシェアがトップではなく、LCCが勢力を拡大しているとした。
 インドネシアでは、首都ジャカルタと第2の都市スラバヤのスロット(発着枠)が足りなくなりつつあるとし、「旅客数ではシンガポールやタイを追い抜きそうだ」と述べた。また「羽田と同様、インドネシアも空港拡張をどのように進めるかが課題」と、羽田と共通する課題にも触れた。

LCCを再定義する時期

「LCCを再定義する時期を迎えている」と語る東工大大学院の花岡准教授=11月7日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
一方、北米と欧州のLCC市場については、北米は成熟期に入り、LCCが拠点空港に乗り入れるなど、FSCとの違いがなくなりつつあると指摘。欧州は成熟中であるとして、ライアンエア(RYR)とイージージェット(EZY)の2強が他のLCCを吸収していると説明した。
 日本のLCCを取り巻く環境については、羽田や成田への乗り入れにスロットや発着時間の制約がある現状から「東南アジアほどの成長は期待できないだろう」と述べた。
 
 LCCの今後について花岡准教授は、北米と欧州、東南アジア、日本など北東アジアの各地域で状況が大きく異なってきていることから、「LCCを再定義する時期に来ている。安い運賃が最大の武器ではあるが、サービスの多様化を提供しているのがLCCだ。少なくとも“格安”という表現は改める時期ではないか」と指摘した。

関連リンク
花岡研究室 [1](東京工業大学大学院)
日本アセアンセンター [2]

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