2013/11/22

記事:「るるぶ」創刊30周年 旅への役割を聞く

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「るるぶ」創刊30周年 旅への役割を聞く(1)

JTBグループが発行する「るるぶ情報版」が発刊から30年目を迎えた。2010年にギネスから発行点数が世界最多の旅行ガイドブックと認定されるなど、30年間の総発行部数は3億8千万部に及ぶ。いまや国民的旅行ガイドブックでもある。「るるぶ」が旅行市場に果たしてきた役割、切り開いてきた新しい旅行の形などについてJTBパブリッシング出版事業本部国内情報部長の宇佐美睦さんに聞いた。

新しい観光地は「東京」

―30年を簡単に振り返ってください。
宇佐美 るるぶ情報版の第1号は84年8月に発行した「るるぶ京都」です。「るるぶ」という言葉が初めて使われたのはもう少し古く、73年にJTBが発行していた月刊誌「旅」の女性向けの別冊でした。いわゆるアンノン族の時代、女性が積極的に旅をし始めた時代です。「るるぶ」はそうした時代に生まれました。
87年に「るるぶ」は新しい分野に挑戦します。「るるぶ埼玉」の発行です。従来、観光ガイドブックは京都・奈良、鎌倉、伊豆箱根といった観光地のラインナップが主流で、埼玉県という1つの県を取り上げた初めての試みでした。ここからいわゆる観光地だけでなく、市街地の観光スポットを紹介していく流れが始まります。都道府県や市町村のラインナップを増やし、読者に新たなデスティネーションとして提案してきました。
るるぶ
第1号「るるぶ京都」を手に
語る宇佐美さん
―まち歩きに先鞭をつけたのが「るるぶ」だった。
宇佐美 「見る、食べる、遊ぶ」という「るるぶ」の言葉に込められている思いは、動詞を使ってガイドするところにあります。見どころや食事処を点で紹介するのではなく、旅の行動を能動的に表現したことが斬新で、こうした表現法は今の旅行ガイドブックのスタンダードになっています。
―年間の発刊点数はどのくらいですか。
宇佐美 2010年にギネスから発行点数が世界最多の旅行ガイドシリーズとして認定されました。30年間の総発行部数が3億8千万部ですから、平均すると国民1人当たり2冊の「るるぶ」を手にした計算になります。
現在、年間のラインナップは市販しているものが国内161点、海外65点で合計226点です。ほとんどは毎年、内容を更新し○○年版として発行しています。
―売れているエリアはどこですか。
宇佐美 京都、沖縄、東京ですね。それぞれ1冊ではなく、京都でいえば、京都・奈良、京都を歩こうといった複数の「るるぶ」を発行していますから。
―この30年で新たに生まれた観光地はありますか。
宇佐美 東京です。30年前には東京の旅行ガイドブックをつくるという発想はありませんでした。東京に来るためにガイドブックが必要になったのは最近です。東京スカイツリーの開業、復元した東京駅を見るために東京に人が来ます。
るるぶ
京都、埼玉、東京駅から、広島カープ
法政大学などの変わり種まで幅広い




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「るるぶ」創刊30周年 旅への役割を聞く(2)

今年で発刊30年目を迎えた「るるぶ情報版」。10月25日号に続き、JTBパブリッシング出版事業本部国内情報部長の宇佐美睦さんにお話を聞いた。

"面"の表現で迷わせず

―30年の間に掲載する情報にはどのような変化がありましたか。
宇佐美 「るるぶ」の使命は誰にとっても分かりやすく、かつ実用的であることです。それは30年前から変わらないし、10年後も変わりません。時代の流行り廃りはあっても、編集の基本コンセプトはそこにあります。その上で、その時代の実用性は何かという観点で編集をしています。
それから一番意識しているのはガイド性です。紙媒体の必要性や強みは「一覧性」という部分にあると思っています。1つの店、施設、場所であればインターネットで検索できますが、たくさんの店を線で結びつけたり、面で表現することができるのが紙の優位性だと思っています。その土地に初めて行く人が迷わなくて、楽しい旅行をしてもらうのが、「るるぶ」が目指していることです。
―一方で住んでいる人を対象にしたエリア特集もありますね。
宇佐美 2003年に「るるぶ練馬区」を発行しました。これは練馬区民の人がたくさん買ってくれました。ちょっとしたお出かけ感覚で周辺をもっと楽しみたいというニーズがあったのかと思います。
こうした「るるぶ地方自治体版」は練馬区以降、少しずつ増えています。大阪では堺市、東大阪市版があります。
神奈川県の相模原市版は政令指定都市になったときに、自治体側から話をいただきました。市町村が合併するけど、合併する相手の市町村のことをよく知らない住民がいる。これを知ってもらおうという行政側のニーズや、知りたいという住民のニーズがあるようです。
―るるぶ大学版もあるそうですね。
宇佐美 2010年から「るるぶ特別編集 大学版」として、実践女子大学や法政大学、明星大学や梅花女子大学版など、これまでに7大学版を発行しています。ただ、これらは市販はしていません。我々のビジネスでいえば地域ソリューションという分野です。情報の発信の仕方に悩んでいる自治体や大学に「るるぶ」が特別編集という形で携わり本にしているものです。受験生に配ったり、学生の親に配ったり、周辺の施設に配るなどです。



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「るるぶ」創刊30周年 旅への役割を聞く(3)

―観光や地域の活性化にガイドブックができることはなんでしょう。

「最高の思い出」の一助に

宇佐美 「るるぶ」はみなさんと一緒に地域を盛り上げ、そのことで人が動く、そうしたお手伝いを続けさせていただきたいと思っています。ネットで調べて分かることはたくさんありますが、そこに「るるぶ」としてどのように付加価値をつけていくか。そのためにはJTBグループとしての信頼を背景に地道な取材があります。
毎年更新しているエリア版で言えば、今年、その観光地に行く人に何を紹介すべきかが編集のベースです。年によって違うでしょうし、それが読者のニーズに合うのかを一生懸命考え取材しています。これがビジネスの根幹です。
多くの旅行者にとっては、ある観光地に一生に1度か2度しか行かないのが普通です。その旅を楽しい思い出にしていただきたい、その楽しい旅のお手伝いをしていきたい。
―編集体制について教えてください。
宇佐美 国内版に6つ、海外版に1つの編集部があります。スタッフは全体で50人程度です。編集長は男性が4人、女性が2人です。編集スタッフは女性が圧倒的に多く、ほとんどが20代です。
本を買っていいただいているのは圧倒的に女性ですので、編集側にも女性の感覚や感性がすごく大事です。
―インターネット、デジタル書籍、スマホの観光アプリ、口コミサイトと強力なライバルがありますが、紙媒体の旅行ガイドブックの将来性はどうでしょう。
宇佐美 出版市場全体が厳しいなか旅行図書市場も例外ではないと思っています。ただ、旅に行く前のプランニングには、当分、紙の優位性は揺らがないだろうと思っています。
電子書籍の旅行ガイドがどれだけ普及するかは、まだ不透明です。紙から電子書籍にシフトという状況はまだ起きていません。
点の情報であればインターネットや口コミがいいんでしょう。でも2日間、3日間をどう回れば最高の思い出になるのかを表現できるのは、旅行ガイドブックです。地域を回ってもらうことが地域活性化にもつながると思うし、そういう面でもガイドブックの役割があると思います。









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